第50回勉強会のお知らせ

ひと雨ごとに寒さもゆるみ、春風が心地よく感じられます。いかがお過ごしでしょうか。

さて、3月の学習会のご案内をいたします。

日時: 2019/03/29 (金), 18:00-20:00
場所: 難波別院 研修ホール 第二会議室
範囲: 宮城顗『大無量寿経講義 三十』(大地の会, 2003), 第119講, pp. 63--85
発表者: 安間観志

今月も前回からの還相廻向第22願の講義の続きです。現在「南和室」が改修で少しの期間使用できません。今回は「第二会議室」です。お間違いのないよう、ご確認ください。多くの皆様のご参加をお待ち申し上げております。

さて、今のテキストの最後に、度々登場する宮沢賢治の「永訣の朝」について触れられています。少し長いですが、ここに再掲しておきたいと思います。「あめゆじゅとてちてけんじゃ」や “Ora Orade Shitori egumo” という音の響きは、皆さんと輪読していると、特に、頭に残ります…

      永訣の朝

けふのうちに とほくへ いってしまふ わたくしの いもうとよ みぞれがふって おもては へんに あかるいのだ (あめゆじゅ とてちて けんじゃ)

うすあかく いっさう 陰惨な 雲から みぞれは びちょびちょ ふってくる (あめゆじゅ とてちて けんじゃ)

青い蓴菜の もやうのついた これら ふたつの かけた 陶椀に おまへが たべる あめゆきを とらうとして わたくしは まがった てっぽうだまのやうに この くらい みぞれのなかに 飛びだした (あめゆじゅ とてちて けんじゃ)

蒼鉛いろの 暗い雲から みぞれは びちょびちょ 沈んでくる ああ とし子 死ぬといふ いまごろになって わたくしを いっしゃう あかるく するために こんな さっぱりした 雪のひとわんを おまへは わたくしに たのんだのだ ありがたう わたくしの けなげな いもうとよ わたくしも まっすぐに すすんでいくから (あめゆじゅ とてちて けんじゃ)

はげしい はげしい 熱や あえぎの あひだから おまへは わたくしに たのんだのだ

銀河や 太陽、気圏などと よばれたせかいの そらから おちた 雪の さいごの ひとわんを…

…ふたきれの みかげせきざいに みぞれは さびしく たまってゐる

わたくしは そのうへに あぶなくたち 雪と 水との まっしろな 二相系をたもち すきとほる つめたい雫に みちた このつややかな 松のえだから わたくしの やさしい いもうとの さいごの たべものを もらっていかう

わたしたちが いっしょに そだってきた あひだ みなれた ちやわんの この 藍のもやうにも もう けふ おまへは わかれてしまふ (Ora Orade Shitori egumo)

ほんたうに けふ おまへは わかれてしまふ

ああ あの とざされた 病室の くらい びゃうぶや かやの なかに やさしく あをじろく 燃えてゐる わたくしの けなげな いもうとよ

この雪は どこを えらばうにも あんまり どこも まっしろなのだ あんな おそろしい みだれた そらから この うつくしい 雪が きたのだ

(うまれで くるたて   こんどは こたに わりやの ごとばかりで    くるしまなあよに うまれてくる)

おまへが たべる この ふたわんの ゆきに わたくしは いま こころから いのる どうか これが兜率の 天の食に 変わって やがては おまへとみんなとに 聖い資糧を もたらすことを わたくしの すべての さいはひを かけて ねがふ