梅雨空のうっとうしい季節となりましたが、変わりなくお過ごしのことと拝察します。
さて、6月の学習会は以下の通りです。
日時: 2017/06/26 (月曜日), 18:00-20:00 場所: 難波別院 事務所会議室 範囲: 宮城顗『大無量寿経講義 二十六』(大の会, 2001), 第102講, pp. 35-61 発表者: 安間観志
開催場所は前回同様、別院事務所と教務所の間の「事務所会議室」です。前回に引き続き、本願文17願の講義です。17願の講義は今回の第102講までとなり、次回はいよいよ18願へと進んでまいります。たくさんのみなさまのご参加をお待ち申し上げております。
さて、今回は寺院探訪。少し前になりますが、ふと思い立って加古川の教信寺を訪ねてきました。ここを訪れたのが3月31日で、桜が間もなく満開という時期だったのですが、思い返せばこの話を誰にも語った記憶がなく、寂しいのでここに紹介させていただきます。
教信寺とは、親鸞聖人が「われはこれ賀古の教信沙弥の定なり」と述べ自らの規範としたとされる、あの教信沙弥のお寺です。境内入って左の奥に、教信沙弥の墓塔と伝えられる石造五輪塔があり、小雨ちらつく中、お参りしてきました。
教信沙弥については多くの資料が残されているわけではありませんが、概略以下のような像を描くことができます。
教信は、はじめは興福寺の碩学で、法相宗のすぐれた学匠でした。ある時期から回心し、西方浄土を願うようになって、興福寺を離れ、播州加古郡西の野口に草庵をつくって住むようになりました。この地は西方が遠く晴れて、極楽浄土を願うものにふさわしい土地でした。教信には妻と一人の子がありました。髪も剃らず爪も切らず、衣も着ず、袈裟もかけませんでした。昼夜に称名念仏をおこたらず、夢中でも名号をとなえました。村人はそんな彼を阿弥陀丸と呼んでいたそうです。教信は僧侶らしい振る舞いをせず、農家に雇われて工銭をもらい、旅人の荷物を担ぐ手伝いをして食料を得ました。
教信の臨終には有名な逸話が残されています。
摂津国の勝尾寺に勝如上人という道心が深い僧がいました。ある時、夜半に庵の戸をたたく者がありました。「私は加古の教信。極楽往生を願い念仏してきたが、今日、すでに往生を遂げた。あなたも、某年某月某日にお迎えがくるだろう」と。勝如は訝って、翌朝、弟子に加古に教信という僧がいるか訪ねてきなさいと命じました。弟子が加古駅の北の小さな庵に到着すると、そこに一人の死人が横たわっていました。狗や鳥が集まって、その死体を啄み食べています。横には老女と童子がいて、一緒に泣いていました。弟子が老女に声をかけると、老女はこう言いました。「この人は私の夫で、名を沙弥教信といいます。年来、弥陀の念仏を称えて極楽往生を願っていましたが、昨夜とうとう亡くなりました。この子は彼との子供です」。弟子がこの話を勝如に報告したところ、勝如はひたすらに日夜念仏に勤しみ、教信がさきに告げたとおりの日に、往生を遂げました。
教信は、庵の西には垣もせず、西方浄土と素通しに向き合うようにして、本尊など安置せず経文も読まず、「僧にあらず、俗にもあらず」、つねに西方に向かって念仏を称えていたと伝えられています。
越後国府在に腰をおとして、恵信尼と息子信蓮との生活をはじめたとき、親鸞聖人もまた、こうした教信沙弥の生き様を規範にしたように感じます。「非僧非俗」を生き、親鸞聖人の姿もまた教信沙弥のように、髭を剃らず、爪ものび、後世者ぶった振る舞いを嫌って妻子と念仏生活をおくっていた姿が思い描かれるように思います。
私が教信寺を参拝した日は、平日の昼間ということもあり、小雨もぱらつき、咲き始めた桜の境内のお参りは私だけで、ぽつんとひとり、上のような教信沙弥の逸話や、そこに大きく思想的に影響を受けた親鸞聖人の面影を頭に描きながら、静かに境内を歩いて偉大な思想を生きた僧について想像を巡らせていたのでした。
実は、この日、この場所で、私は、安冨信哉先生の訃報を聞きました。先生がこの日の未明お亡くなりになったと。そして、実は、勝如上人の逸話ではありませんが、私自身の身にも、この数日後とても不思議な出来事が起こったのです。まさか、夢に先生が出てきて、何月何日にお迎えがくる、という内容ではけっしてありませんが、私のここ何年かの体験の中ではもっとも記憶に残る、とても神秘的でさえある出来事でした。それは、書き出すと長くなるので、また今度の機会に。気がつくと、もうこんなに書いてしまいました。では、では、学習会で。
最後に教信寺のアクセスだけ書いておきます。
所在地 : 兵庫県加古川市野口町野口465 アクセス : 神姫バス「野口」下車すぐ 問い合わせ : 教信寺, TEL(079)422-7189 Web : http://www.bekkoame.ne.jp/~housenin/link32.html Wiki : https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%99%E4%BF%A1%E5%AF%BA_(%E5%8A%A0%E5%8F%A4%E5%B7%9D%E5%B8%82)